5G革命、「第一幕」メタバースからNFT
ピカソが描いた(リアルの)「ゲルニカ」の売買額は、200億円以上です。
一方、精巧に造られ、本物と見分けがつかない贋物には、原価ほどの価値しかありません。
原価は、いずれもキャンバス代と油絵具代の数万円。 「ゲルニカ」は、スペイン内乱に乗じ無差別爆撃を行ったナチスドイツへの抗議の思いが背景のストーリーとして語り掛けてきます。ピカソがその時に感じ、アートとして表現した貴重な歴史が刻まれています。
リアルの「ゲルニカ」の所有には、コミュニティ内で、誰もが認める、記録されたコンテンツの価値があります。尚、絵画の価格は、売り手と買い手の需要と供給で決まります。
■昨年末、闘病中の坂本龍一が演奏した記録、「戦場のメリークリスマス」の音符595個の一つ一つがNFT化され販売され、高額の取引が為されています。
音符一つ一つのデジタルデータは、無制限にコピーされる為、過去のアナログの様にコピーの度に劣化する事はありません。この類のデジタルの複製物は、クオリティは変わりません。よって、デジタルの複製物の価値は、零に近づいていきます。
一方、「コミュニティ内」で誰もが認める、オリジナルのNFTに対しては、高額の価値が認められています。NFTというデジタル上でUnique、「オリジナル」を特定するブロックチェーンの技術によって可能となった現象です。
NFTの音楽、画像、映像のコンテンツの価値は、クオリティという「客観的な価値」ではなく、唯一無二であるという「認識」、即ちコミュニティ内で認められる、又、所有者が満足する「主観的な価値」です。
これまでの記録されたメディア、アナログ盤、CD、DVD等パッケージビジネスの価値は、データというコンテンツ、そのもののクオリティが価値であった為、インターネット上で無制限にコピーされる様になった時代では、情報として消費される様になりました。記録物の「客観的な価値」は零に近づいていくという事です。結果、ダウンロード市場が衰退し、記録物は「所有する」トレンドから「所有しない」サブスクリプションへとサービス形態が移行しました。
今、NFTによりオリジナルが特定できる事で、一種の「所有」という価値へ回帰する動きが生じています。尚、これは、「客観的な価値」でなく、一種の「主観的な価値」です。
「主観的な価値」であれ、様々な方法とサービスを設ける事で、再び、コンテンツに対して、その本来の「意義」に相応しい価値付けとマネタイズが可能となります。
クリエーターが有意義なコンテンツやメッセージを生み、再生産するという「市場の再構築」が可能となります。長期的には、明るいニュースです。
■一方、完璧なミックス、編集、バランスをつくり、数千回、数万回と視聴しても耐えうる音楽や映像といった記録されたコンテンツ、原盤、メディア。インターネット上で、記録メディアは無制限にコピーされる時代になり、この原盤ビジネスは滅んだのか。即ち、記録メディアの「客観的な価値」は零に近づくしかないのか?
一つの光明は、インターネットでは流通しない、パッケージ化(DCP化)された配給のビジネス、或いは専用線で通信、衛星で供給するビジネス、例えば「映画」に関しては、まだ未だ成長の可能性があります。国内でも、毎年100億円を超える興行作品が複数出ています。
「視覚聴覚」への訴求という「インターネット」。このインターネットには代替できない価値、「体感・体験」をシネマコンプレックス(シネコン)が提供しているからです。
「映画」を上映するシネコン、4DX、IMAXは、「記録メディアの最後の砦」の一つと位置付ける事ができるのかも知れません。「映画」という古い産業が、シネコンというネットに代替できない「体感・体験」を提供する「場」を創る事によって、市場にある種のイノベーションをもたらしました。
ICAは、ライツマネジメントの事業の一環として、2010年よりデジタルでは ダウンロード事業に加え、劇場配給のビジネスを。フィジカルでは リアル店舗、シネコンでの物販、イベントの事業を切り拓いてきました。
短期的には今、先ず、フィジカルのコンテンツ、シネコンへの物販供給で事業の立ち上げ、利益とキャッシュフローのプラススパイラルをつくり、事業の「一点突破」を為さなければいけません。※更に、シネコンへの配給と供給は、国内のみならず、国境を越え、北米、南米、アジア等、流通のグローバル化が可能です。
■今、インターネットに於いてブロックチェーンという仕組みがライツマネジメントに新たな可能性を提供しています。
現在、5G、メタバース界に於いて、コンテンツの4D化、NFT化によって、新たなビジネスの可能性を感じています。
常に市場は変化しています。既存のものはいずれ衰退します。逆に、新たなイノベーションによって新たな可能性が拓けてきます。
我々には、常に「時代」とコミュニケーションを行い、アンテナを張り、イノベーションを起こし、ライツの「活用の出口」を無限に創出していくスタンスが必要です。
知的財産、ライツは、形や技術に捉われないが故に、そのマネジメントの可能性は無限大に開けていきます。
ICAは、世界が向かう 良きメッセージの「健全な再生産」のサイクルをつくるべく動きます。